Tuesday, November 22, 2011

KIM Jeong Ah 金貞我 「朝鮮時代の図像資料と風俗画

非文字資料研究
金貞我「朝鮮時代の図像資料と風俗画

KIM Jeong Ah in Kanagawa university
iconology documents and genre painting in Chosun period


http://www.himoji.jp/jp/popup/people/kim_j.html

http://www.himoji.jp/jp/publication/pdf/newsletter/NewsLetter05_A4.pdf
http://www.himoji.jp/jp/popup/publication/seika_010302.html

神奈川大学21世紀COEプログラム「人類文化研究のための非文字資料の体系化」研究成果報告書
Report on the Results of “Systematization of Nonwritten Cultural Materials for the Study of Human Societies” Kanagawa University 21st Century COE Program

東アジア生活絵引


朝鮮風俗画編

Pictopedia of Everyday Life in East Asia compiled from the Joseon Period-Genre Paintings
神奈川大学21世紀COEプログラム研究推進会議
The Kanagawa University 21st Century COE Program Center

まえがき

絵引という言葉は、日本の大きな国語辞典にも見出し語として出てこない単語です。従って、日常用語としては全く使われることはなく、その意味を多くの人は知らないといって良いと思います。それほど新しく、また狭い世界でのみ用いられる言葉なのです。この言葉が登場したのは今から40年前のことで、財団法人日本常民文化研究所が編纂した『絵巻物による日本常民生活絵引』によってです。それは、単語を見出し語にした旧来の字引に対して、絵を窓口にするという方式を示すものでした。
『絵巻物による日本常民生活絵引』全5巻は、日本中世の絵巻物を素材として、描き込まれた生活を示す事物や行為を取り出し、それに語彙を与えて示すというものでした。絵引は、文字で記録された文書記録からはうかがい知ることができない具体的な事物や人々の行為を教えてくれました。次第にその価値が知られるようになり、今や日本中世の生活文化を考える際の必須の研究工具となっております。神奈川大学に引き継がれた研究所は、改訂版を刊行しましたが、新版も多くの人に受け入れられ、今も版を重ねています。
私たちが21世紀COEプログラムに申請するための研究計画を検討した折、先ず最初に決まったのが『絵巻物による日本常民生活絵引』を継承発展させるという課題でした。具体的には、第1に『絵巻物による日本常民生活絵引』を英・中・韓・日の4カ国語で利用できるマルチ言語版の編纂、第2は中世絵巻物による絵引を継承発展させる日本近世・近代生活絵引の編纂。そして、第3の課題として、絵引という編纂方式が日本以外の文化においても可能かどうかを検討する東アジア生活絵引の編纂でした。
第3の課題である東アジア生活絵引編纂は、中国および朝鮮半島における18世紀を中心とした時期の図像による絵引編纂を構想しました。研究を開始してみますと、それぞれの文化、それぞれの時代によって、図像のあり方には大きな相違があることが分かってきました。日本では当たり前に考えられる図像と人々との緊密な関係も異なりました。絵引編纂という共同研究は困難を極めましたが、朝鮮半島、中国それぞれ適切な図像資料を獲得して、研究を展開することができました。
本書は、朝鮮時代に制作された風俗画を素材として編纂した東アジア生活絵引の1巻です。朝鮮時代には、多くの風俗画が描かれました。それらは人々の日常生活を温かい眼差しで描いております。それらの風俗画を資料に、生活の具体相を把握できる絵引の編纂を試みました。異なる文化について絵引を編纂することは非常に難しいことです。本書の編纂に際しましては、種々の工夫と努力をしましたが、十全に朝鮮時代の生活文化を把握し、示しているとは言えません。あくまでも試験的な段階の試案本です。本書を手にした皆さんには、どうか忌憚のない意見をお寄せいただきたいと思います。
最後に、本書編纂に際して、様々な便宜を与えてくださり、またご教示くださった韓国の各研究機関・関係者の皆さんに深く感謝の意を表します。
2007年12月神奈川大学21世紀COEプログラム第1班代表福田アジオ


東アジア生活絵引

目 次
朝鮮風俗画編
まえがき

i
凡例

iv


耕織風俗図屏風

1
1
女性の仕事・子供の遊び

2
2
洗濯物を干す

4
3
頭上運搬と背負い運搬

6
4
男の田起こし・女の種子播き

8
5
鋤で耕す

10
6
秋の稔りの庭仕事

12
7
稲束を打ちつけ脱穀

14
8
碓を搗く女

16
9
小正月の月迎え

18


檀園風俗画帖

21
10
昼飯を食う

22
11
井戸端の風景

24
12
川辺の洗濯

26
13
道行く家族

28
14
帰途につく馬方

30
15
満載の渡し船

32
16
朝鮮相撲シルム

34
17
舞の喜び

36
18
少年たちのゴヌ遊び

38
19
書堂での勉強

40
20
脱穀作業と監督する男

42
21
水田を耕す

44
22
糸紡ぎと筵編み

46
23
機織りと女性

48
24
の仕掛けで魚を獲る

50
25
瓦屋根を葺く

52
26
村の鍛冶屋

54
27
煙草を刻む

56
28
蹄鉄打ち

58
29
旅籠での食事

60
30
背負う男・いただく女

62
31
占卦

64
32
嫁迎えの行列

66



平壌監司饗宴図

69
33
城内の風景

70
34
街の賑わい

72
35
御座船に乗る平壌監司

74




園傳神帖

77
36
夜道を行く男と女

78
37
大人の喧嘩

80
38
女性の沐浴空間

82
39
洗濯と沐浴

84
40
音楽のある野の宴

86
41
小料理屋

88
42
巫女の舞と女性の願い

90
43
法鼓と招福の願い

92


平生図

95
44
両班の夜間外出

96
45
峠を越え行く官吏一行

98
46
官吏の一行と土下座する男

100
47
科挙の合格祝い

102
48
街中を進む嫁迎え

104
49
結婚60年の祝い

106
50
初誕生

108


四季風俗図屏風

111
51
野外で焼き肉を楽しむ

112
52
官吏の外出に直訴

114
53
冬の街角

116
54
町場で喜捨を乞う

118

解題と考察

121
朝鮮時代の風俗画資料と絵引編纂金貞我123
絵画資料の民俗学的意義中野泰133
朝鮮風俗画に見る民俗福田アジオ143

参考文献目録151
索引(日本語・韓国語)156


凡例
1本書は『東アジア生活絵引』の1巻である。2本書は、朝鮮時代の六つの風俗画作品を選定し、さらにそのなかから54枚の図を選択した。この検討は主として金貞我が行った。六つの作品は以下の通りである。
①筆者未詳「耕織風俗図屏風」4曲1双(各47.0×105.0cm)絹本淡彩 漢陽大学校博物館蔵

②金弘道筆「檀園風俗画帖」25葉(各27.0×22.7cm)紙本淡彩 国立中央博物館蔵

③筆者未詳「平壌監司饗宴図」3幅(各71.2×196.6cm)紙本着色 国立中央博物館蔵

④申潤福筆「園傳神帖」30葉(各35.6×28.2cm)紙本着色 澗松美術館蔵

⑤筆者未詳「平生図」8曲1隻(各53.9×35.2cm)絹本着色 国立中央博物館蔵


⑥筆者未詳「四季風俗図屏風」8幅(各76.0×39.0cm) 絹本着色 国立中央博物館蔵
3 各図像について用いた底本は以下の通りである。
編『』2003(『漢陽大学校博物館開館記念図録』)〈「耕織風俗図」〉『
』2002(国立中央博物館『朝鮮時代風俗畫』韓国博物館会)〈「平壌監司饗宴図」〉『




1971(『檀園風俗画帖』探求堂)〈「檀園風俗画帖」〉『』
1974(『園傳神帖』探求堂)〈「園傳神帖」〉『』

2004(国立国楽院編『朝鮮時代音楽風俗図Ⅱ』民俗院)〈「平生図」、「四季風俗図」〉4選択した図に描かれた事物・行為に番号を与え、それらを表現する語を日本語および韓国語(ハングル)で付け、また図全体を読み取り解説した。5作品単位に章を編成し、各絵には描かれた内容に基づいてテーマを設定した。各章の中は、その主題に基づきおおむね社会・経済・儀礼・信仰・芸能の順序に配列した。6一つの図とそれに対する語句キャプション・読み取り解説を見開き2ページに収録した。従って、対象の図の大きさによって、拡大もしくは縮小しており、原図の大きさとは一致しない。

7 各図に付ける番号は、以下の原則のいずれかによった。
a その図像に与えたテーマに即して、テーマに近い事物から周辺的な事物へと付ける。
b 遠近法に従い、図像の中の近いところから遠いところへと付ける。
c 描かれた図像内容の時間にそって付ける。
d 左上から右下へ付ける。

8 番号に対する語の記載に際しては、まとまった全体についての語の場合は○を、また行為を示す場合には□を、それぞれ番号に付けた。
9各事物・行為に付ける語は、以下の基準によった。a原則として事物単体にキャプションを付ける。b日本語の名称は現代日本語として一般に理解できる単語を優先させた。必要に応じて朝鮮時代の漢字表記、また現代韓国語をカタカナ表記で括弧内に示した。c韓国語による名称はハングル表記とした。d推測・推定・想像によるキャプションはできるだけ避け、推測・推定・解釈に及ぶことは解説で記述した。
10 本書の編纂は共同研究の方式で行われ、研究参加者全員で検討し、完成させたものであるが、各図の読み取り解説については原稿を作成した者の個性が残されているので、各文末に括弧書きで担当者の名字を記載した。
11 事物・行為に対する語句キャプションについては、日本語、韓国語とも主として金貞我が作成し、研究参加者全員で検討し、完成させた。
12 本書編纂過程で獲得した知見は、各人が解題と考察編として記述した。
13 巻末には、キャプションとして付けた語彙についての索引を付した。日本語は五十音順、韓国語はハングルの語順によって配列した。
14 キャプションに付けた語彙のうち、日本人にとって理解困難な語については、索引に簡単な説明を付した。執筆は金貞我が担当した。
iv






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