Thursday, July 12, 2012

Hong Gil Dong and Tangon

『快刀 洪吉童』、쾌도 홍길동
Hong Gil Dong

http://ameblo.jp/gyuqi/day-20110425.html


チャンフィ☆ファッショニスタ その7
2011年04月25日(月)
テーマ:快刀ホン・ギルドン

シンガポール公演の騒ぎもなんのその、
ひたすら自分の趣味まっしぐらの
チャンフィ・ファッショニスタ『道袍(トポ)』編その2であります。

長くなりすぎて、自分でも困ってしまった…。

⑭男性の頭飾りと、金の唐草文様の上衣を重ねた紫の道袍

『快刀ホン・ギルドン』第18話で、
チャンフィは両班たちの協力を得るために
チェ都承旨の手引きにより、
故リュ大監の父、リュ・ヨンホ老の館を密かに訪れる。

その際、チャンフィは長く伸ばしていた髪を結い上げて、
サントゥという髷を頭頂部に結った髪形をしている。

これは王朝時代の成年男子の髪形で、
当時はトンコッという簪に髪を巻きつけてサントゥ髷を結い、
髪が乱れないように幅6cmほどの網布(マンゴン)を鉢巻のように巻き、
その上に略帽の宕巾(タンゴン)をつけ、さらに黒笠(フンリプ)などを被っていた。






現在、時代劇ドラマで使われる
サントゥ髷のかつらは、
網布に髪のかつらが付いていて、
それをかぶってから結い上げて
サントゥ髷の形を仕上げるようになっている。

その際、網布を固定するための紐は
慎重に適度な力で結ばねばならない。
強く結んでしまうと頭痛を起こすし、
ゆるいとすぐに外れてしまうからだ。

だが男性はまだ楽な方。
時代劇の女性用の高く結い上げた髷の
カチェ(かつら)は軽いもので2.5キロ、
重いものは5キロにもなる代物なので、
女優さんは撮影待ちのあいだは
カチェをすっぽりと外して
しばし首を休めている。

そんなに大変そうなかつらを着けたままでも、平気で寝ているグンちゃん…。



網布の左右の紐に通した小さな輪は貫子(クァンジャ)という。
貫子は玉や金製のものがあり、
金貫子は品階が高いほど小型で簡素なものを用いている。

貫子がちょっと見えにくいかな…。



また、黒笠の上に付いている笠飾りは
頂子(チョンジャ)というもので、
品階により金・銀・銅・玉・水晶と素材が異なる。

チャンフィの頂子は玉で白鷺を象った
「玉鷺(オンノ)」と呼ばれる頂子のように見える。

お習字みたいに見えるけど、台本広げているだけ。





冠帽に装飾することは
両班だけに許されていたことであり、
それらの装身具は着用する人物の品階に応じて
材質や色彩、種類などが厳格に定められていた。

チャンフィのこの服装は、
黒笠が金貫子や玉鷺で飾られ、
また笠紐(カックン)に
翡翠や白玉などを用いていることで、
品階の高さが即座に分かる身ごしらえなのだ。

また、両班の礼服である道袍は紫、
細く平らに編まれた腰帯や別の腰紐は赤と
王族がよく身につけていた色を使っており、

加えて、黒の繻子織り地に
唐草文様を金襴で表現した豪華な上衣を重ねれば、
身分が高い人物だと一見して分かる。

そのようにチャンフィの装身具も服装も、
いかにも王族にふさわしくあつらえてはいるのだが、
いかんせん、貫禄はカケラも感じられないのがザンネン。

第1話の黒地の着物よりもジジむさい柄なので、
若君の優しげなベビーフェイスにはいかにも似合わない。

あれ、まさか上着はノ尚宮とお揃いかな?! それにしても、ノ尚宮のミッ○ーマ○スを横倒しにしたみたいな頭飾りはいったい。



だが、このジジむさい衣服を着ている時のチャンフィは、
いたって冷静沈着で合理的な思考を持つ人物だ。

第19話冒頭で、イノクがリュ・イノクではないかと
配下から報告を受けた時も、
チャンフィは彼女のこれからの人生を慮って
慎重な態度を崩さない。

だが、第20話でイノクがチャンフィを王にするための
計画に協力すると申し出ると、
チャンフィは彼女を使って
両班の勢力を利用するために素早く行動する。

ギルドンのサングラスを掌に握りしめて
慣れぬ環境に耐えるイノクを、
簾の向こうから痛ましげに見守りながらも、
確固たる意思をもって
チャンフィは王座への道をひた走っていく。




チャンフィが王位に就いたことは、
善意や情熱のみで実現できたわけではなかった。

即位した後も、四寅剣の秘密を握って
政権運営を独占したい両班たちと渡り合うために、
チャンフィは反感を封じ込めて
計画的な駆け引きをしながら時を待つ。

第23話でチャンフィは臣僚のみの
秘密会合の場にみずから乗り込み、
ギルドンと活貧党の討伐を宣言したうえで、
四寅剣の秘密についても
必要とあらば生命を奪うと恫喝して
家臣の口を封じさせる強さを見せる。






王として強くならない限り、
自分の世を守ることはできない。
そのためには他者に犠牲を強いることも辞さない。
それができぬ者に王の資格はない。

たとえその者が利害を離れた時間の中で
お互いに気心が知れたギルドンであっても、
理想を分かち合えなかった以上、
覚悟を決めて戦うしかない。
両者とももうすでに逃げ場はないのだから。

そして愛する人を欺くことさえも
チャンフィはやってのける。
残酷な運命から守るために
イノクの入内を解消し、
清国に一時滞在する手はずを整えてやる。

内面に刺さる自責の念にさいなまれつつ、
イノクだけは何としてでも生き延びてほしいと願う
ひたむきな心情が滲むチャンフィの表情に、
慈愛と残酷さがどこで反転してしまったのだろうかと、
たまらなく切なくなってくる。




人はこの世でたった一人しかいない、
この自分を生きるしかない。

その孤独さや寂しさを眼の底に湛えつつ、
今、チャンフィはもう2度と
活貧党の暮らす山へ去った彼女の名を口に出さない。

けれど、そのひとへの思いは深い。

彼女が与えたささやかな喜びも、
胸を裂くような悲しみも、

それらすべてを胸の奥に抱え込んだまま、
これからも生きてゆくしかない。




昨日はすでに過ぎ去り、明日はまだ来ない。

ただ今日1日はあのひとも自分も生きている。

ギルドンに最後の別れを告げに来た、
王族の印の紫の道袍をまとったチャンフィが
うっすらと穏やかな笑みを浮かべた時、

どこまでも哀しい現実のなかでも
新しい時代へ踏み出そうとする覚悟と意思が、
その若々しい風貌とあいまって
心に確かに伝わってきたのだった。

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