Monday, December 3, 2012

"GUNG HO" internationalization of Japanese companies

http://www.sgu.ac.jp/com/kawanisi/gungho.html

日本企業の国際化~GUNG HOを事例に

Gung Ho,in 1986 movie
Gung Ho is a 1986 Ron Howard comedy film, released by Paramount Pictures, and starring Michael Keaton and Gedde Watanabe. The film's story portrayed the takeover of an American car plant by a Japanese corporation (although the title of the film is actually an Americanized Chinese expression, for "work" and "together"). The film was rated PG-13 in the US and certified 15 in the UK.

(学習の目的)
経済成長の恩恵で日本企業も成長し続けたが、よりいっそうの成長のため、海外進出を図らなくてはならなくなった。日本企業はいわゆる日本的経営という日本の特性に合わせた経営を行ってきたが、海外においてそうした経営を行おうとすると摩擦をおこした。今回取り上げるのは米国映画"Gung Ho"(86年作品)、日本の自動車メーカーが現地生産する苦労を皮肉っぽくユーモアで描いている。アメリカ人がイメージする日本人や日本的経営ってこんな感じか、と苦笑することであろう。Gung Hoという言葉は元々中国語で「がんばろう」とかいう意味らしい。

第1回 企業の国際戦略


1. 「GUNG HO」part1

① あらすじ

下着工場が2年前に閉鎖され、9ヶ月前に唯一の大型産業であった自動車工場も閉鎖された米国の田舎町Hadleyvilleにハントが、日本のアッサン自動車を誘致した。ハントはその功績が買われて、労使調整担当部長へ就任した。しかしながら、米国現地工場へ派遣された日本人社員と現地工場の従業員との間で、誤解に基づく様々な摩擦が生じる。果たして日米の共同事業はうまく行くのか?

② 主な登場人物

Hunt Stevenson(Michael Keaton)…多分閉鎖された自動車工場の労働組合委員長でアッサン自動車を誘致した功労者。アッサン自動車工場では労務担当部長を勤める。

高原かずひろ(Geode Watanabe)…アッサン自動車現地工場の取締役工場長

斉藤…現地工場次長で常務の甥で嫌な男。

坂本常務(山村総)…国際事業担当常務取締役

③ 物語の背景

a. 1970年代日本の自動車会社は、高い生産性とドル高を背景にした低コスト優位と、品質の良さから米国への輸出を増大させた。

b. 1970年代末、米国自動車会社の業績が悪化、レイオフ等を行ったために政治問題になる。米国内では日本車のover emergenceを防ぐため、保護主義的な考えが台頭してきた。

c. 1980年に米国大統領に就任したレーガンは保護主義の動きには反対するものの、米国経済に対して理解を日本側に求める。そこで、通産省が中心になって日本の自動車業界は米国輸出自主規制をまとめ、1982年から開始する。

d. 一方、米国政府は同時に米国内での現地生産を日本の自動車会社へ強く要求した。 1970年代に既に米国進出を決定した本田技研に続き、トヨタ、三菱、日産などが1980年代中盤から現地生産工場を立ち上げることになった。

④ ドラマのポイント

a. 映画に出てくるアッサン自動車のシーンや、日本人の描かれ方から、米国人の日本観を考えよう。

日本人は会社人間で、会社の厳しい規律に従い、集団的に行動し、会社のためにすべてを捧げると米国人に思われている。確かに1960年代、70年代、Economic Animalと揶揄されてた頃の日本人ビジネスマンはそうかも知れないが、今はずいぶん違う。ただ、朝の体操は多くの日本の海外工場で行われているらしい。映画に描かれていた川に入って精神統一するとか、アッサン自動車の重役会議室の東洋的なインテリアは明らかに誤りだが、こういうのを真実だと思っている欧米人は多いんだろうな。欧米人にとって、こうした日本人のサラリーマンは異様に思えるらしい。一方、生産管理の厳しさや勤勉さは今もあまり変わらず、こちらはkaizenやQCなど欧米が学んでおり、賞賛されている。

b. なぜ、アッサン自動車は米国Hadleyvilleへ進出することを決定したのか?

貿易摩擦による通産省からの圧力によって、米国生産を考えていた時に、既にある設備を使えるHuntからの話があって意思決定したと思われる。

c. 米国労働者と自動車労組の関係は?

全米自動車労組(UAW)は産業別労組の中でも力が強い。UAWが中心になって、産業の統一賃金を定めているが、かなり高い。そのため、日本の自動車会社が進出したとき、人件費の高止まりを懸念した会社側が労組に加入させないような労務管理を行っていた。失業した米国人労働者も、賃金が下がっても良いから仕事が欲しいので、労組に加入せず日本の自動車会社に雇用されていた。

d. 朝の体操がなぜ米国従業員に嫌われたのか?

朝の体操は何のためにやるか意図が不明だから、米国人は体操をやりたがらなかった。また、集団で体操をやるのはダサイ、と思っているのであろう。労働災害を防ぐためのwarm upであることを最初に説明してからやれば、米国人はもっと協力的であったであろう。

e. 米国人工場従業員と、アッサン自動車日本人社員の仕事と会社への意識の違いを比較しよう。

映画の中では、日本人社員にとっては会社と仕事は生活の中心であり、自己を犠牲にしてまでも尽くすべきものであると考えている。会社の中での行動は規律を守った集団主義的である。一方、米国人労働者は自分の生活やライフスタイルをもっとも優先している。会社の中での規律は本人の考えによって修正され、個人主義的行動が中心になる。

f. 地元労働者と日本人経営者の板挟みにあった労使調整担当部長のハントの立場を考えてみよう。

日本人社員対アメリカ人労働者の対立構図にあって、ハントは米国人で、他の工場労働者とは友人である。日本に対して進出してくれたことや採用してくれたことに対する好意を持っているものの、日本人の仕事のやり方に、違和感を覚えている。しかし、ハントは労使調整担当部長と役員待遇の管理職である。そのため、高原工場長の命令に従って、米国人労働者を日本人労働者並に働かせなくてはならない。経営陣と現場の板挟みに合う中間管理職のつらさと、日本人と米国人の板挟みに合うつらさがある。

2. 企業の海外進出

①海外進出の段階

第1段階:海外からの引き合い(間接輸出)
第2段階:直接輸出の開始
第3段階:海外の販売支店や子会社の設置
第4段階:海外生産
第5段階:グローバル・ネットワークの構築

②海外進出の方法

a 間接投資による進出(取引契約・提携)

b 完全子会社による進出

c 合弁事業による進出

d 現地企業への資本参加や買収

③企業の海外戦略

マルチ・ドメスティック戦略orグローバル戦略

④マルチ・ドメスティック戦略

a 参入した地域における競争優位構築が目標

b 現地のニーズに合わせた製品を開発し、現地に合ったマーケティングで販売する。

c 企業の機能を各国の子会社が有する

d 子会社への権限委譲が大きい

⑤グローバル戦略

a 参入した地域だけではなく、世界での競争優位構築が目標

b 標準化された共通の中核製品を、最低限の現地ニーズ適合への改良で世界各国で販売する。

c 企業の機能を最適な立地によって世界に分散配置する

d 本社の中央管理が強く、子会社への権限委譲は少ない

⑥グローバル戦略を実行する要件

a. 市場条件
顧客ニーズが世界的に同質化、グローバル顧客の出現、統一されたマーケティングが可能

例:ストリート系の若者のニーズは、アメリカで生み出され、世界中に瞬く間に伝わって、世界中のストリート系の若者に関するニーズは同質化する。

b. コスト条件
規模の経済性や範囲の経済性の実現、国ごとのコストと能力の差異

例:スポーツシューズやウェアは東南アジアで生産コストは、アメリカで生産するよりも1/2~1/10程度ですむので、全面的に東南アジアへ生産委託している。

c. 政府の政策
国際企業への規制が緩やか

d. 競争条件
競争相手がグローバル戦略を追求するか、自社が国際展開が競争優位構築に必要な場合


第2回 日本的経営

1. 「GUNG HO」part2

① あらすじ

米国人従業員と日本社員の親睦をはかったソフトボールも気まずい結果になった。それ以来、日本人と米国人との間の対立は激しくなり、Huntは高原工場長に日本的経営が米国では通用しないと言ってしまう。Huntの言葉に対して高原は反発し、労使調停係の解任を言い渡される。それを挽回しようとHuntは米国人従業員を説得して日本的経営を受け入れさせると約束するが…

② ドラマのポイント

a. ソフトボールの試合で見る日本人と米国人の相違を考えよう。

仕事を離れた遊びでも、日本人は統一されたユニフォームを着て、規律のある練習をする。そして、あくまでも勝負にこだわって、せこいバントをしてまで出塁しようとする。

b. なぜ、ソフトボールで親善する目的が逆効果になったのか?

太った米国労働者シャハイザーが、斉藤に体当たりをして勝ちに行ったため、親善が反対に遺恨を残す結果になってしまった。

c. 日本人管理者と米国人従業員の仕事に対する意識の差はどこにあるのか?

米国人労働者の場合、仕事を金銭的報酬を獲得する場として捉えている。そのため、仕事で自己実現欲求を満たそうという気は持っていない。自己実現はプライベートで追求するのである。一方、日本人社員は終身雇用などから生じる会社本位主義から、仕事で自己実現しようとする。そのため、仕事でミスをするなどもってのほかなのである。

d. Huntは日本的経営のどこが悪くて、米国人労働者に受け入れられないのか、と思っているのか?

アメリカの文化やアメリカ人の個人主義を無視した、一方的な日本人の価値観の押しつけによる経営のやり方であり、労働意欲向上のプログラムではない。そのため、米国人には受け入れられないとHuntは思っている。

e. 中間管理職である高原の心情を考えよう。

高原はアッサン自動車の落ちこぼれ管理職で、自分の管理手法が仕事の楽しさを奪っているかもしれないと疑っている。Huntの主張も理解できるが、坂本常務のチェックがあり、今度失敗したらくびになるため、Huntの主張を認めるわけにはいかず、板挟みになっている。

f. 高原の主張する日本的価値観による経営、Huntの米国的価値観による経営、どちらを支持するのか?

個人の価値観はどうあれ、日本の企業の多くや役所などの団体組織では日本的経営の特徴がいろいろと見受けられる。

2. 日本的経営~人的管理

① 終身雇用

入社してから定年まで(60歳が一般的)、大きな失敗がなければ雇用が継続されるという人事政策で、日本以外の企業でもこうした政策を採用している企業はあるが、日本で顕著と言われる。高度成長期に人材不足に悩んだ企業が、終身雇用政策を採用した。その会社に慣れ親しんだ従業員に長く勤めてもらいたいというのは経営者の希望と合致するものの、年功賃金と組み合わされ、従業員の勤続年数が長くなる傾向によって人件費が高くなるため、明文化していない企業が多い。中小企業は労働条件の低さから転職する労働者が多く、結果として終身雇用になっていない。労働条件の良い大手企業は従業員の定着率良いため、結果的に終身雇用になっている。終身雇用は従業員の人生の半生にわたる経済基盤を提供することから、従業員が企業に依存する関係を生み出し、いわゆる会社人間を作る主要な要因になっていると言えよう。近年、経営の悪化から早期退職勧奨などによって40歳以上の従業員の人員削減を進めている企業も多く、また、若い人の転職志向と相まって終身雇用が以前ほど一般的になってはいない。

② 年功賃金

年齢や働いている企業での勤続年数の長さによって、給与が上昇する。一般的に年功賃金では賃金と組織への貢献が一致しないと言われ、20歳代と50歳代では働き以上の給与が支払われ、30歳代と40歳代では働き以下の給与しか支払われないようだ。年功賃金は、組織への貢献と給与の適合性、実績の高い社員と低い社員との間の不公平感から、最近は見直されてきている。いわゆる能力給や成果給を採用する企業が増加している。

③ 新卒採用重視

社内で従業員を研修して、自社に適した人材に育てるという方式を採用しているため、給与の安く、柔軟性のある新卒を採用することを好む企業が多い。最近では、学生の能力や意欲が低いこと、企業が人材育成にかってほど金と暇をかけられなくなってきたので、中途採用を増やしている企業も多い。

④ マルチ・タスク…職務記述書の曖昧性

一人の従業員がいくつかの仕事ができるような研修を受け、仕事の状況に応じて多様な仕事を行う。

⑤ ジョブ・ローテーション

社内の異なる部署へ異動して、多様な職務能力を身につけていく。2~4年程度の周期で、配置換えがある。そのため、欧米企業のようにずっと同じ仕事をしてスペシャリストになるのではなく、日本企業はゼネラリストを育てる傾向にある。

⑥ 組織内学習によるキャリアアップ

会社内で様々な職務をこなして出世するというキャリアパスがあるため、職務を通じて自己研鑽に励んでいく。

⑦ 経営陣の内部昇進

会社のトップの多くは、その会社における出世頭で、他社から社長をスカウトすることは少ない。欧米企業でも内部昇進の社長は結構いる。

⑧ 集団成果主義

個人で評価される一方、部署などの下位組織単位でも評価される。そのため、自己中心的になって自分の成績を上げるだけではダメで、部署の成績をあげるためにチーム・プレーも行わなければならない。

3. 日本的経営~組織の制度と構造

① 集団的意思決定

稟議制度(書類を回覧し意思決定の根回しや是非を問う方法)などで多くの人間を意思決定に関与させるが、最終的な決断は社長が行う。意思決定されるまでは遅いが、一度決まると合意を得ているので実行が速い。

② ボトムアップ的意思決定

経営上の意思決定案の多くは、ミドル・マネジメント(中間管理職)がたたき台を策定し、経営者がそれをベースに最終的な意思決定案を立案する。そのため、現場の意見が取り入れられやすい。

③ 企業内労働組合

米国が産業別労働組合で、全米自動車労組ならば、GM、フォード、ダイムラー-クライスラー等会社に関係なく自動車会社に勤務する工場労働者が加盟する。一方、日本は会社別労働組合で、トヨタ自動車労働組合には管理職を除くトヨタに勤務する従業員によって構成される。そのため、日本の労働組合は経営陣との対決姿勢は厳しくなく、むしろ会社と協調しながらWIN-WINの関係を築こうとしている。

④ 株主軽視の企業統治

日本企業は株の持ち合いなどをしているため、ものを言わない株主が多い。また、社長は株主によって選ばれるのではなく、前社長の指名によって決められる。そのため、株主の利益を軽視して、社内の論理で経営が決められていくことが多い。

⑥ 小集団活動による品質管理

日本企業では職場の小集団単位で品質管理の研究に励み、それを仕事へ活かすシステム、例えばQC(品質統制)、ZD(欠陥ゼロ)、などの運動を導入している。そのため、製品品質は1980年代は非常に良かったが、最近たるんできており、雪印の集団食中毒事件のようなケースが多く見られる。

⑦ 有機的組織

各個人の仕事が緩やかに決められているので、仕事の量と質に対して柔軟に対応できる。欧米企業は職務記述書がしっかりと書かれており、仕事の内容が固定的である。

4. 日本的経営~経営戦略

① 暗黙的な経営戦略過程

経営戦略が集団的意思決定により、どこでどう立案されたのかが分かりづらい。

② 本業重視と関連型多角化

欧米企業は株主のために、高い株価の維持を重視する。そのため、既存事業と関連性が薄くても、収益性の良さそうな事業分野へ参入しようとする。一方、日本企業は多角化のシナジーが見込まれる分野を中心に多角化をし、本業を重視する。これは人材や設備をドラスティックに合理化や転用ができないことが一因かも知れない。

③ マーケット・シェアや売り上げ規模の重視

日本企業の人事管理は、経営不振だからといってすぐに人員削減を行えない。そのため、従業員の食い扶持を稼ぐために売上を確保しなければならなくなり、マーケット・シェアを追求する戦略を採用する。

④ 同業他社や取引先との協調的戦略

欧米企業は取引先をもっとも条件の良いところから選ぶため、取引1回ごとに取引先を見直す。日本企業は系列下請を持ち、長期取引で納入製品のコストを下げ、品質を安定させようとする。そのため、協調的な関係を構築しようとする。また、規制業種や官需に依存している業種では、談合などで協調が盛んな業界もある。

5. 日本的経営~従業員の意識

① 会社への連帯感と忠誠心

② 会社本位主義

③ 会社=生活の場?

④ 公私の混同…滅私奉公

⑤ 集団主義

6. 日本的経営~産業構造

① 系列取引による価値システム・ネットワークの効率化

長期取引によるコスト低減と品質の向上が図られる。

② 下請けと親会社の二重構造

下請けの多くは中小企業で収益性が低い一方、発注先の取引先や親会社は比較的収益性が高い。

③ メインバンク制

企業を全面的に支える金融機関が特定化されている。企業にとっては安定した資金供給を得られ、銀行にとっても安定顧客の確保につながるメリットがあるが、銀行も経営不振企業を救済する余裕がなくなりつつあり、メインバンクの責任を果たせなくなってきている。

④ 間接金融の比重が大きい

株式や債券の発行の方が資金調達コストが低いものの、市場の不安定さから資本コストが高くなるものの、銀行を中心とした間接金融に依存しなくてはならない。

⑤ 独立的ベンチャーが生まれにくい

リスクを取って起業する人間も少ないし、それを支援する体制がまだ不十分。新規事業は大企業の中から生まれることが多い。

7. 日本的経営の本質

① 7Sモデル・・・経営に重要な要素を経営コンサルタント会社が見つけだした



(ハードの3S)

Structure=組織構造

Strategy=経営戦略

Systems=システム(人事、財務、生産、情報、販売等)

(ソフトの4S)

Shared Values=組織文化

Skills=組織能力や従業員の能力

Style=経営スタイル

Staff=人材

② 日本的経営…ソフト重視

③ 欧米的経営…ハード重視

④ 経営においては7つのSすべてを重視しなくてはExcellent Companyになれない



第2回 異文化経営

1. 「GUNG HO」part3

① あらすじ

Huntのついた昇給のための生産ノルマに関する嘘から日本人社員と米国人従業員が対立し、アッサン自動車は米国現地生産からの撤退を決めてしまう。高原もHuntも仕事を失うことになる。そんな二人が工場を救うために再び立ち上がり、ノルマである15,000台を達成するため協働を始めるが、坂本常務のチェックまでの残り時間は少ない…

② ドラマのポイント

a. Huntと高原はどうして理解し合えたのか?

人間同士のコミュニケーションでは、腹を割って話さないと、相手は信用してくれないし、理解してくれない。日本人らしく(?)、高原は酒を飲んで、酔い、自分の立場を離れて自分の本音をHuntを打ち明けた。高原もアメリカの文化に触れて、Huntの考えも少し理解でき、互いを理解する素地ができあがっていたところに、高原は坂本常務へ反発して失脚する恐れが、Huntは工場従業員のストライキによって労働担当部長としての責任を問われて失職の恐れが生じ、両者のキャリアの危機がよりいっそう相手を理解することを促進した。

b. なぜ、高原はアッサン自動車の経営のやり方にうんざりしたのか?

米国人従業員の考え方に少し感化されて、私生活すら犠牲にしてしゃかりきに働いて、何のために働いているのか疑問に思い始めた。

c. なぜHuntと高原だけで無理な自動車生産を再開したのか?

互いに地位を失うところまで追い込まれて、変な二人ともメンツや意地も棄てた。そして、最初の目的である月産15,000台にあと1,000台と迫っているのに、ここで止めるのは残念という気持ちが強くなったのである。そこで、無理を承知でも、坂本常務へ意地を見せ、一緒に少しでも目標に近づけようと、二人で自動車を組み立てる気になった。

d. Huntと高原二人だけで生産を再開したのを見て、他の米国人労働者や日本人社員は何を思い、二人を手伝い始めたのか?

Huntは町を出ていくアッサン自動車を引き留めようと頑張っている。嘘をついた責任を取ろうとしているHuntを仲間として手伝いたくなったのである。一方、仕事一辺倒ではなく、家庭生活まで気を配ってくれていた上司の高原が本気になっているので、部下として助けたくなったのである。

e. なぜ、坂本常務は約束の15,000台に達していなかったのに、15,000台と認めたのか?

約束通り15,000台を生産すれば、従業員を昇給させ、ストライキも終わりになる。撤退は取り止めになるのだ。坂本常務は、日米の従業員が文化の差異を超えて協働できたことを理解した。今後、日本の工場と同等以上にハドレービルの工場が素晴らしい成果をあげるであろうと予測し、欠陥車があるため15,000台に達していなかったものの、あえて約束を果たしたと粋な計らいをしたのである。

f. 今後、この工場の経営はどうなっていくであろうか?

人種や異文化の差異を超えて協働できることは、他国での経営にとってもっとも重要な要素の一つである。それをクリアーしたハドレービルの工場は今後は素晴らしい成果を挙げていくと見られる。

2. 異文化経営における組織変革

① コミュニケーションによる互いの文化、目的や価値観の理解と共有

互いに文化を理解し、尊重して相手に接し、会社としての目的や価値観を共有しなくてはならない。そのための前提として、コミュニケーションが両者間でしっかりできていることである。

② 異文化を超えた共通の想い(何を、何のために一緒に働くのか?)→協働の意欲

③ 互いの文化や価値観を尊重した協働

相手を見下しているような、相手を配慮しない上下関係では、協働は生じにくい。相手を理解し、尊重していることが相手に理解され、命令に正当性があれば、協働は可能であろう。

④ 異文化の衝突から生じるカオスを乗り越えて創造的協働作業が生まれる→組織メンバーの創り出す新しい、異種文化融合の組織文化による組織統合

⑤ GUNG HOにみる組織の変革

第1フェーズ…異文化に根差す拒否反応と対立(日本人は働き過ぎ、細かいことを気にしすぎ、習慣がこっけいvsアメリカ人は仕事をなまける、仕事がいい加減だ)

第2フェーズ…組織の危機の共通認識(アッサン自動車の撤退)

第3フェーズ…組織目的の理解と共有(15,000台の自動車を生産しよう)

第4フェーズ…異文化に根差す価値観・行動の相違を超えた共通目的を達成するための協働(アメリカ人と日本人が一緒に工場のラインで働く)

第5フェーズ…協働意識の創出(アメリカ人はやるじゃないか、日本人の指摘したことは正しかった、両者が力を合わせる方が良い)

第6フェーズ…成功体験の共有(15,000台達成、昇給)

第7フェーズ…成功からのフィードバック(互いに力を合わせて日米の混合チームで頑張ろう)

第8フェーズ…新たな組織文化や協働システムの創造と制度化(互いの良いところを取り入れた生産方式、仕事のやり方、人事管理等を作る)

⑥ GUNG HOから学ぶべき点

a. 他国文化に対するステレオ・タイプの先入観を捨てる

b. コミュニケーション能力の重要性

3. 日本的経営を超えて~ハイブリッド経営へ

① 7Sの要素すべてを重視する経営

欧米の経営はどちらかというとハードのS(Strategy,Strcuture,System)を重視し、日本的経営はソフトのS(Shared Value,Staffs,Skill,Style)を重視。7Sすべてを追求することが、国籍にかかわらず、普遍的な優良企業への道。

② X+Y=Z

米国的経営はどちらかといえば、米国人労働者が仕事を生活の手段と割り切っているためにX理論をベースにした経営、日本的経営はどちらかといえば、日本人労働者が勤勉なのでY理論をベースにした経営。しかし、日本の労働者は米国的意識を持ち始め、米国人労働者も仕事による自己実現を目指し始めているので、折衷的なZ理論で経営をしていくべきである。

③ 有機的組織(アナログ的経営)と機械的組織(デジタル的経営)の混合

a. 専門性と自律性を持ったメンバーが職務内容がオーバーラップする領域で自由に活動できる・・・有機的組織

b. メンバーに対する職務や意思決定・行動基準に関する明示的なルールの策定

c. パワーの源泉を情報創造力とコミュニケーション力に置く

④ 異文化との融合によるカオスの発生→新たな組織文化の創造…組織の進化

⑤ 日本国内における異文化

外国人労働者・女性の社会進出・若い世代(新人類)といった人たちは異文化の人と同じようにコミュニケーションを取っていく。

4. 海外進出の3フェーズ

① 第1フェーズ…海外で現地人を雇用して操業→一方通行コミュニケーション

② 第2フェーズ…現地人管理者の自主権拡大時期→両面通行コミュニケーション

③ 第3フェーズ…日本と現地における創造的協働作業→協働コミュニケーション

④ 日本企業の現地会社のタイプ

a. 日本化型組織…日本的経営を移植

b. 分離型組織…日本人が行う職域は日本的経営で現地人が行う職域は現地化型経営

c. 橋渡し型組織…日本的経営、現地化型経営、その折衷的経営手法が混在する

d. 現地化型組織…完全に現地化された経営

e. ハイブリッド型組織…日本的でもなく現地的でもない新たな創造されたり折衷的な経営

3. 日本企業は特異なのか

① 現地人管理者から日本人管理者への不満

a. 職務内容、責任の所在、評価基準があいまい…あうんの呼吸による職務遂行

b. 現地人管理者へ経営を任せない…集権的経営の重視+現地人を信用しない

c. 日本人の現地管理者は日本の本社の意向を気にする…腰掛け意識

d. 会社の利益ばかり強調され個人が阻害される…会社本位主義+会社の概念の相違

e. 意思決定が遅く非効率、意思決定基準があいまい、対立を好まない…集団的意思決定

f. 日本人と現地人との間のコミュニケーションが足りない…島国根性

g. 日本人の発言内容と意図が異なる…高コンテクスト文化

② 文化に根差した会社や仕事に対する意識の相違→日本人管理者と現地人管理者のコミュニケーション・ギャップを生む

③ 日本的やり方や考え方を現地人に説明せず、また現地の事情を考慮せず押し付ける→本能的反発を買う

④ ③とは反対に現地人の意向を気にしすぎて自らの経営方針や経営戦略を追求できない→収益があがらない

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